No.42

うらを見せ
おもてを見せて散るもみぢ
良寛

 大自然の中で、自然の営みにしたがい生きること。そして、悪い時も、良い時も、どちらの時にあっても心が動揺する事なく平常心でいること。

 それが、良寛さんのこだわりなき自由なる心、その心の奥に秘められていた思いなのではないでしょうか。

 現代社会の中で生きている私たちは、人の目や世間体をおもうばかりに、表面のみをとりつくろって毎日を過ごしがちです。

 しかし、どんなにつくろい飾ろうとしても、生地(自己)の実物の上に化粧して生きている以上、いつかはその化粧は剥げてしまいます。

 ですから、自己を飾る生き方ではなく、どこまでも自己をあるがままにしっかり見据えて生きようと努力する事が、私たちにとって二度と繰り返すことができない、かけがえのない人生の生き方として最も重要であり、そのような人生を歩いていかなければならないのです。 さらに、己をさまざまに飾り、名を求め楽を追うのではなく、この命は、今、ここにあらゆるものによって生かされていることに気づかなければならないでしょう。

 この「命そのもの」に眼を見開くならば、まさに冒頭の句のごとく、表も裏もともに「もみぢ」の命のすがた、あらゆるもののかけがえのない命のすがたが見えてくるはずです。良寛さんのように自然を愛し、自然にさからわず、あるがままに生きる事こそが大切なのです。


解説
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