No.30

「今生の仏法修行 此れ檀越の信心に依りて 成就す」
 瑩山紹瑾「當山尽未来際置文」


 「人間」という言葉は、「人のあいだ」と書きます。これは文字通り、人は人間関係によって初めて成り立つもの、人は一人では生きて行けないということを意味しています。

 私たちの周りには家族がいて、親戚の人がいて、友人がいて、地域との繋 がりがあって、初めて自分自身がいるのです。

 会社でも同様です。多くの関係者、取引先と消費者等々、数え切れない人々との繋がり、助け合いによって経営・発展が可能なのです。

 お寺とて例外ではありません。住職一人、もしくはその家族だけでお寺が維持できるわけではありません。多くのお手伝いの方々、檀信徒の方々の御協力、さらに地域を含めた多くの人々の協力があって、初めて寺院の維持・運営が出来るのです。

 寺は、檀信徒の皆様方により見守られ育てられていきます。そしてその期待に応えるべく、感謝報恩の修行をする住職の姿があるのです。住職の修行も皆さん方のサポートがあって初めて成り立つといえるのです。

 この互いに支えあうという関係は皆様方と、仏の道に進まれて仏道修行に励まれていると考えられる皆様のご先祖様方との間にもいえることなのです。七月、八月はお盆の時期です。それぞれのご家庭で精霊棚を設けたり、仏壇を飾ったりしてご先祖様をお迎えになると思います。今は亡きご先祖様の姿を偲び、その恩に報いるために、食事を具え飲み物を用意し、様々な供物を並べ、信心の誠を捧げるのです。

 手の届かない遠い世界に逝かれたご先祖様に対するこの思いは、必ず伝わります。 そして皆様方のその思いと手助けによって、ご先祖様方は仏の世界で修行を続けられ、同時に仏さまの加護が我々に巡ってくるのです。

 お盆に際し、彼方の世界に逝かれたご先祖様方の安穏を祈念し、皆様方の追善のお気持ちを形にしてみましょう。


解説
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