No.26

釈迦牟尼佛 見明星悟道曰
我与大地有情  同時成道

 十二月八日は釈尊成道の日です。仏教はお釈迦様(ブッダ仏陀)がお説きになられたものですが、この日に釈迦族の王子であった、ゴータマ・シッタルダが成道なされ、お釈迦様になられたのですから、この日はいわば仏教の誕生日といえる大事な日であります。

 お釈迦様は東天に輝く暁の明星を一見した瞬間、悟りを開かれたのであります。その驚きと感動の中で「我与大地有情 同時成道」と獅子吼されたと伝えられています。この言葉の意味を我々禅宗では「一心」「本来の面目」「草木国土悉皆成仏」等々と、多様な言葉で表現しています。これは私たち人間のみならず、ありとあらゆるものがことごとく如来の智慧徳相を具えているのだ、仏性を持っているのだということを、お釈迦様は自覚されたと理解するからです。 

 お釈迦様は後に「私は人間に生まれ、人間に長じ、人間に仏を得たり」と述懐されております。人間として生まれ、人間的に成長され、そして「人間に仏を得たり」とご自分の人生を結ばれるのです。「人間に仏を得たり」即ち、成仏・成道が最高の人間の姿であるとお示しになったのです。理想の人間の姿がここに端的に表されています。

 現在に至って、個人・家庭・社会・環境などのあらゆる方面で、種々の問題が生じ、私たちが危機的状況にあるということが、声高に叫ばれています。このような大きな転換の時代だからこそ、お釈迦様の教えが私たちの本来のあるべき姿、理想として私たちに偉大な力を与えてくれるのではないかと思います。二十世紀も最後を迎えるに当たり、仏教の原点であるお釈迦様の成道を自己の理想とし、今一度自己のありようを振り返って日々の生活を行じていきたいものです。


解説
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